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「選ぶ」から「作る」へ
Redditの r/fountainpens(登録者40万人超)では、毎週のように「インク調合に沼落ちした」という告白投稿が上がる。市販の万年筆インクだけでも世界に数千色が存在するにもかかわらず、「まだ自分のための色がない」と感じた人々が、混色の世界に踏み込んでいく。
TikTokでは #InkMixing タグの動画が繰り返しバイラルを生んでおり、複数のインクボトルを組み合わせてスポイトで色を合わせ、試し書きをするタイムラプスが何度もループされている。それは料理の「仕込み」を見るような満足感を視聴者に与える——結果よりも過程に美しさがある、という価値観だ。
万年筆インク市場はグローバルで毎年着実に拡大しており、調合・DIY関連の派生需要がその成長を牽引している。「既製品を買う」から「自分で作る」への移行は、インク沼においても確実に起きている。
混色の科学——pH・粘度・乾燥速度
万年筆インクの混色は、絵の具の混色と似ているが、一つ重要なルールがある。同じブランド内で混ぜるのが基本だ。異なるメーカーのインクを混ぜると、化学的な相性問題(凝固・沈殿・極端なpH変化)が起きることがある。
特にプラチナ万年筆の「ミクサブルインク」シリーズは、混色前提で設計された数少ない製品のひとつで、 r/fountainpens では「安全に混色できる最高の入門システム」として繰り返し推薦されている。6〜12色のベース色から出発し、スポイトや注射器で比率を変えながら理想の色を探す作業は、まさに「書斎の化学実験」だ。
混色で生まれた色は、調合ノートに記録する。比率(1:2:1など)、使用したインク名、pH計の数値(可能なら)、乾燥後の変化——これを続けることで、「再現できる自分だけのレシピ帳」ができあがる。これがインク調合の最終的な楽しみだ。
海外で評価されているインク調合の道具
1. 混色の「出発点」ミクサブルインクシステム
プラチナ万年筆の「ミクサブルインク」は混色専用設計の万年筆インクで、Amazonレビューでも r/fountainpens でも「混色入門に最適」という評価が圧倒的だ。6基本色(青・赤・黄・緑・黒・白濁)を揃えると、理論上は無限の色が作れる。海外では単品での購入より「全色セット」が人気で、Etsyでも「Fountain
pen ink mixing starter set」として類似商品が多数出品されている。
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2. 精度を上げる「シリンジ(注射器)」
インク調合で最も重要な道具がシリンジ(注射器型スポイト)だ。海外のインク調合愛好家コミュニティでは「1mlメモリ付きの医療用シリンジ」が定番で、Amazonでは100本入りパックが「fountain pen ink mixing」関連のベストセラーに常にランクインする。0.1ml単位で精密に比率を管理することで、「先週と全く同じ色が再現できる」体験が、この趣味の核心だ。
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3. 調合インクを保管する「空ガラスボトル」
混色して完成したインクを保管するための空瓶も重要な道具だ。Etsyでは「empty ink bottle glass」に3,000件超の出品があり、特にコルク栓付きの小型ガラス瓶(5〜10ml)がインク調合趣味のコミュニティで人気だ。ラベルに色名・調合日・比率を記入して並べていくと、それ自体が「コレクション」になる。Rhodiaのガラスインク瓶や、無印良品の小型ガラス容器も代用品として広く使われている。
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いま、海外で「インク調合」が再評価されている
YouTube では「Ink mixing fountain pen」関連動画が数百万回再生を記録し、特に「ゴールドとグリーンを混ぜて森の朝の色を作る」といった詩的なコンセプトの動画が高いエンゲージメントを生んでいる。
Instagramでは #FountainPenInk タグに25万件以上の投稿があり、インク調合の「スウォッチ(色見本)」を並べた写真が美しいとしてバイラルを繰り返す。スウォッチコレクションそのものをアートとして投稿するアカウントも複数存在し、フォロワー数万人規模に育っているものもある。
Etsyでは「handmade fountain pen ink」に1万5,000件超の出品があり、植物材料から抽出したボタニカルインク(ベリー・クルミ・イカ墨)も人気カテゴリだ。「自分の庭で採れた植物で作ったインク」という文脈が、ライフスタイルと筆記趣味の交差点として機能している。
レシピを持つ人間の静かな自由
誰かが名付けたインクを使い続けることと、3本のボトルを混ぜて「自分にしかない朝の色」を作ることは、似て非なる行為だ。
完成したインクに名前をつけ、空ボトルに詰めてラベルを貼る。試し書きをして、調合ノートに比率を記録する——その一連の作業が終わったとき、書斎の小さな棚に「自分の色」が一本増える。
それだけのことが、なぜかひどく豊かに感じられる。
効率化の果てに残った夜の時間を、何に使うか。Analog Pulse は、海外で静かに広がるアナログ回帰の動きを追いかけながら、「不便という贅沢」を探しています。




